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04:ブレイドン・アカデミー

 ギターポップが流れるドイツ製の青い車に乗り込んだものの、目を丸くしたパパとママの顔が忘れられない。二人のあの様子からすると、ジェイの存在をまるきり知らなかったらしい。

 せっかく迎えに来てくれたジェイを無下にすることもできず、パパはわたしを送り出してくれたけれど、あのあと速攻でデイビッドおじさんに電話をしたはず。おじさんとの会話については今夜聞けそうだし、ジェイについてもなにかわかるかもしれないけれど、よくよく考えるとこの人ってほんとに謎だらけだ。

「ぼくの顔になにかついてる?」

 ハンドルを握るジェイは、前を向いたまま小さく笑った。

「えっ」

「さっきから見られてて落ち着かないよ。運転にも慣れてないから、そうやってあんまり見つめられると集中が途切れて事故るかも」

 わたしはとっさに目をそらした。

「み、見つめてたわけじゃないよ。ただ、あなたがすごい謎だなって思っただけ」

「謎?」

 ――よろしく、サイキック・ガール。

 そう言ったジェイの声が、耳の奥でよみがえった。

「どうしてわたしのこと、『サイキック・ガール』だなんて言ったの」

「デイビッドに聞いていたから。彼はぼくを、きみの護衛にしたいらしい」

「えっ?」

 なにそれ。戸惑うわたしを横目で見たジェイは、

「デイビッドはきみが心配みたいだ。すごくね」

 そう言って、クスッとした。

「そうだ。『サイキック・ガール』で思い出したよ。まだ時間はあるね」

 時計を確認し、車を路肩に寄せて停めてから、助手席のわたしを見た。ほんと、見れば見るほどきれいな顔。こんなに整った顔立ちの男の子、生まれてはじめて間近に見てる。でも、性格はどうかな。自慢じゃないけれど、わたしは他人を見た目で判断しないようにしている。だって、きれいな容姿なのに意地悪な子をたくさん知ってるんだもの。

「きみのトルマリンある?」

 ジェイが右手を差し出した。

「えっ……と、これ?」

 スカートのポケットから黄金色に輝くお守りを出すと、ジェイもデニムのポケットに手を入れる。取り出したのは、粉々になったはずのペンダントのチェーンが修理されたものだった。

「そ、それ。どうしたの」

「拾ってなおしたよ。こういうことするの好きなんだ」

 わたしの目の前にあるグローブボックスを開け、中からペンチを取り出す。そうして器用に手を動かしながら、

「ぼくの父は元モデルの写真家で、デイビッドの知人だよ。母とは中東で知り合って、ぼくが生まれた。でも、不安定な情勢で母は他界し、父も病気になって母のあとを追ってしまった。そういうわけで、デイビッドがぼくを養子にしてくれたんだ。謎でもなんでもない、よくあることだよ」

 なんでもないことのように、さらりと話す。まさか、そんな事実だったなんて。

「……謎だなんて、軽く言ってごめん。それ、よくあることじゃないよ。あなたにとっては大変だったことでしょ」

 ジェイは一瞬、驚いたように目を見張った。でも、なにも言わずに作業に戻る。石をチェーンの金具に付け終えると、

「できた。はい、どうぞ」

 わたしの手にそっと返してくれた。どうしよう。性格と容姿が見事に比例しているだなんて、この街じゃ絶滅危惧種だ。

「……あなたもわたしと同じ学校?」

「うん。今日からだよ」

「そっか」

 ジェイはきっと人気者になる。こんな男の子、女の子たちが放っておくわけないもの……って、わたしなに考えてるんだろ。そんなことどうでもいいのに。

 思いなおしながら、お守りのペンダントを首に下げた。

「その……修理してくれてありがとう。すごく嬉しい。大事なお守りだから、ここにあるとやっぱり安心するもの」

「それはよかった。どういたしまして」

 ジェイの第一印象は、どこかさびしげで神秘的な瞳の持ち主だ。いまも、笑顔の裏に暗い影を感じる。気の利いた慰めの言葉がひとつもまともに思い浮かばなくて、心底歯がゆい。

「わたしのサイキック能力なんて、あなたの人生を思えば全然たいしたことじゃないね」

「え?」

 今度はジェイが訊き返した。わたしはリュックのポケットを探って、いつも持ち歩いている色とりどりの棒キャンディを取り出す。

「ペンダントのお礼にならないかもだけど、よかったら好きなの選んで。このキャンディ、どれもすごくおいしいんだ」

 ジェイがふたたび小さく笑った。

「ありがとう。じゃあ、この水色にするよ。どういう味?」

「ソーダ味」

 ジェイは包装をはずすと、口にくわえた。ハンドルに手を添えてアクセルを踏もうとしたとき、かかっていたカセットテープの片面が終わる。

「さっきの曲知ってる。イギリスのバンドでしょ」

「うん。かっこいいよね」

 と、ガチャンという音がたち、もう片面の曲が流れ出す。すると、ジェイはクスクスと笑いながらつぶやいた。

「これ、ほんと面白い」

「え? 面白いって、なに?」

 はっとしたように息をのみ、ジェイは言った。

「この味だよ。この味が面白いなって」

 ただのソーダ味だけど、味覚は人それぞれだ。ジェイには面白い味だったらしい。だけどわたしには、『カセットテープが面白い』って言ったように思えたんだけど、それってわたしの勘違いかな。

 なんだろ。ジェイにはまだなにかありそうな気がする。それもやっぱり、わたしの勘違いなんだろうか。

 

★ ★ ★

 

 由緒正しいブレイドン・アカデミーの一日は、サバイバルだ。でも、宿題や課題が大変だからってわけじゃない。事実、それらの量は多くない。大変なのは、もっと別のことだ。

 大都会のど真ん中らしからぬ広さの敷地内に入る。外車やバイクが並ぶ駐車場に、ジェイが車を停めた。

「送ってくれてありがとう」

 車からおりると、ジェイも続く。

「帰りも送るよ。そうしないとデイビッドに叱られるからね」

 冗談めいた語調でそう言ったジェイは、生徒たちを見渡すとけげんそうに眉を寄せた。

「私服と制服の学生がいるけど、この学校って制服があったんだね。デイビッドはとくになにも言ってなかったんだけどな」

「私立だから、一応ね」

 生徒の自主性を重んじているブレイドン・アカデミーでは、制服と私服が自由に選べることになっている。でも、実際に制服を許されているのは、ヒエラルキーのトップに君臨している生徒だけという暗黙の了解があった。ようするに、誰が学校内でえばりちらしてもいいのか、その他大勢の生徒たちに思い知らせるためのくだらないルールってこと。だから、その他大勢のわたしみたいな子たちは、礼装するような式典以外で制服を着ることは許されていない。意味不明だけれど、それが昔からの慣例になっていた。

「うちの学校の制服には、スーパーパワーがあるの。着ているだけで品行方正で頭がよくて、上流階級に属している証拠になるから」

 ジェイが苦笑する。

「制服で立場をしめせるなんて、独裁国家みたいだね」

 ごもっとも。

「あなたの意見に一票」

 わたしが言うと、ジェイはクスッとする。

「それは光栄」

 白亜のお城さながらな石造りの校舎を目指していると、人だかりが視界に飛び込んだ。無視をして通り過ぎようとすると、ジェイが立ち止まる。

「あれは?」

 制服チームの男の子二人が、噴水のそばで顔を突き合わせていた。あーあ、またやってる。

「天敵同士の文化部部長と体育部部長の小競り合い。吹奏楽部のスケジュールがいっぱいなんだけど、アメフトの練習試合が急遽決まっちゃったものだから、文化部部長が一軍じゃなくて二軍の子たちをあてがったの」

 それが気に入らない体育部部長兼アメフト部部長のメイソンは、文化部部長兼新聞部部長の、わたしもよく知っているヘンリーをにらみまくっていた。

「チアはなんとか一軍を集めてもらったんだから、そっちもうまいこと工面しろよ。おれたちがこの学校のスターだってこと、忘れてるわけじゃねえよな? ヘンリー」

 スマートな体格ながらアメフトのスター選手であるメイソンは、エメラルド色の眼光を強くする。

 制服チームは思い思いに着崩して、ほかの生徒の羨望を集めることに必死だ。メイソンの着こなしは、相変わらず全体的にワルっぽい。対するヘンリーは、イギリス寄宿舎の生徒みたいな着こなしで応戦していた。今日もすみからすみまで隙がない。ウイングチップの革靴までぴかぴかだなんて、十代にあるまじき行為だ。

 腕を組んだヘンリーは、メイソンに負けじと眼鏡を光らせた。

「残念ながらバスケ部の公式試合と同日とあっては、当然一軍はそちらに向かわせる。二軍とはいえ部長を説得し、スケジュールを組み直したんだ。文句を言われる筋合いはない」

「ひ弱なバスケ部だぜ? どうせまた負けるんだから、こっちに一軍をよこせって」

「断る」

 ヘンリーが返答した直後、バスケ部集団がメイソンを囲みはじめた。一触即発となった瞬間、

「試合に出られなくてもいいのなら、お好きにどうぞ。こちらもスケジュール管理が減って助かるしな」

 ヘンリーの言葉で、全員がフリーズした。と、ふいにヘンリーがこっちを見る。軽く手をあげようかなと思ったものの、ヘンリーはすぐに背中を向けて校舎に入っていった。本当にわたしが見えていないらしい。そうわかってはいるものの、心底げっそり。

「……うーん、一生仲良くなんてなれない」

 思わずつぶやくと、ジェイがわたしを見た。

「なに?」

「なんでもない」

 こんなのは序の口。だって、わたしにはなんの関係もないもの。サバイバルの本番はここからだ。

 校舎に入り、ジェイと並んで廊下を歩く。すると、制服チームの女の子が三人、こちらに向かっている姿が視界に飛び込んだ。廊下にいた学生たちが、モーゼの起こした海の奇跡みたいにパカンと割れて引いていく。邪魔する者のいなくなった廊下を、ゆるやかなウェーブのブロンドの髪をなびかせるミラとその取り巻きが、コーヒーカップを片手に悠然と歩いて来た……って、マズい。

 絶滅危惧種みたいなジェイが見つかったら、きっと面倒なことになる! はっとしたわたしは、

「こっち!」

 すぐさまジェイの腕を引っ張った。

「なに?」

「今朝はメデューサ軍団の登校が早かったみたい。あなたはここで背中を向けて、じっとしてて」

 ロッカーのすみにジェイを押し込み、強引に背中を向けさせた。

「メデューサ軍団?」

「そうだよ。目を見たら石にされるから、ここでじっとしてて!」

 ジェイの背中を壁に押しつけ、自分のロッカーに駆け寄った。直後、ミラを中心としたメデューサ軍団がわたしに気づいた。

 入学してすぐ、わたしはミラに友達になろうと誘われた。理由は簡単。元スーパーヒーローで超有名人のデイビッド・キャシディに近づくためだ(本当のヒーローはパパだったけど)。でも、そんな子はこれまでもたくさんいたから、とくに気にしなかった。仲良くなれたらそれでいいと思っていたから。

 制服チームに仲間入りできて、しばらくは気分がよかった。何度か食事やショッピングをしてお泊り会もしたけれど、ママとキャシーママが楽しそうに笑っている姿を目にしたある日、自分が背伸びをして無理をしていることに気づいてしまった。

 ママたちみたいに、ミラたちと笑ったことがなかったからだ。

 ミラたちにはルールがたくさんあった。バッグはどこの、靴はどれ。男の子に好かれるのが一番大事なことだから、髪型はこうで、かわいく見せるためにはこうしないと。

 必死についていこうとしたけれど、本当の自分を捨ててまで一緒にいる意味なんかないと、そのときわかったんだ。

 だって、そもそもわたしはジャンクな古着をミックスするのが好きで、ブランドに興味なんかない。似合うものは人それぞれだから、ネイルもメイクも雑誌なんかお手本にしないで、みんな自由にすればいい。

 男の子に好かれるためにおしゃれをするんじゃなくて、自分の好きなおしゃれをしていて、出会った男の子と恋をしたい。

 ひとりぼっちでも、自分の好きな自分でいたい。

 そう決意して制服を脱ぎ、もう誘わないでくれと告げようとした日。トイレの個室にいたわたしは、わたしを笑いものにしているミラの声を聞いてしまった。仲良しのふりをしていただけで、陰ではわたしを笑っていたのだと悟ったとき、脱力のあまり笑ってしまった。

 個室を出て手を洗い、目を見張って黙り込むミラの自慢の靴を、スニーカーで踏みつけてやった。

「おっと、忘れてた。今朝このスニーカーで、犬のフンを踏んだんだった」

 わたしの嘘に、潔癖のミラは絶叫した。

 人気者のミラに反発する子なんていない。彼女はわたしがいかに凶暴かを大げさに言いふらし、その噂に尾ひれがついて以後、わたしのロッカーには『凶暴ジーン』とか『古着モンスター』みたいな落書きが絶えないことになり、友達皆無の毎日を過ごすはめになったのだった。

 もう慣れちゃったし別にいいけど、モテモテで人気者のママとは雲泥の差だから、自分ながらがっかりすることなんて日常茶飯事。だからときどき、無理をしてでも媚びまくって、どこかのグループに入れてもらったほうがいいのかもって思うこともある。

 でも結局、ひとりでいることを選んでしまう。媚びまくりの人気者なんて、メッキを塗りまくったプラスチックみたいだもの。だったら最初から、ありのままのプラスチックでいたほうがずっとマシ。

 ミラがわたしに向かって来た。今日も新しい嫌味を吐くべく、グロスが輝くかわいらしい唇を開いていく――と、プリント用紙を見ながら歩いていた女の子が、ドシンとミラにぶつかった。

「あっ、ごめんなさい!」

 瞬間、ミラの持っていたコーヒーカップが飛び、制服を茶色に染める。

「ちょっ、ちょっと! なんなのよ!」

 ぶつかったのは、ぼさぼさのロングヘアで、分厚い眼鏡をかけた女の子だ。膝丈のスカートに、チェリー柄のシャツとニットベストという生真面目スタイルで、三泊はできそうな大きさのリュックを背負っていた。

「ご、ごめんなさい! オフィスの位置がわからなくて戸惑ってしまって! この見取り図、迷路みたいなんだもの」

 彼女も転校生らしい。ミラが目をつりあげた。

「制服が汚れたわ、信じられない! どうしてくれるのよ!」

「なんなのこの子。ダサいったら!」

 人が集まってきた。激高するミラと取り巻きに、転校生は萎縮して背中を丸めた。ほんと、いちいちドラマチックにしすぎ。こんなに目立ってどうするんだろ。

「そんなに騒がなくてもいいでしょ。洗えば落ちるんだから」

 わたしみたいな犠牲者は、わたしだけで充分だ。転校生をうしろにして立つと、ミラがわたしを見すえた。

「コーヒーだもの、落ちないわよ!」

「そのコーヒーはあなたが持ってたものだし、落ちないなら新しく買ったら? あなたの靴よりも安い値段だよ」

 ブルーの瞳が三角になり、きれいな顔がメデューサに変身していく。これはヤバい。なにかよからぬことを考えはじめてる顔つきだ。と、人だかりの向こうから、メイソンが姿を見せた。

「どうした?」

 最悪なことに、メイソンはミラに夢中だ。ここぞとばかりに、ミラはメイソンに泣きついた。

「ジーンがわたしにコーヒーをぶちまけたの!」

 あーあ、またはじまった。この嘘つき! すると、転校生がわたしの背後で声を震わせた。

「ち、ちち、違うわ! わ、わわ、わたしが……」

「ややこしくなるからなにも言わなくていいよ。大丈夫。わたし、この学校でモンスターだから」

 えっ? と転校生は、眼鏡の奥のありんこみたいな目を丸くした。

 正義のヒーローぶりたいメイソンが、ミラをかばうようにして立つ。

「ジーン・ジャズウィット。おまえがミラに嫉妬してるのはわかってんだ」

 はあ? はあああ? いつからそうなったわけ!? 開いた口がふさがらない。

「そんなわけないでしょ、バカみたい」

 ミラが嘘泣きをする。メイソンは怒り、悪魔の形相でわたしを見下ろした。

「頭にきたぜ、ジャズウィット。女子のあれこれに首を突っ込むつもりはないが、ミラをいじめるおまえだけは別だ」

 えっ、えええ? ミラの嘘を完璧に信じきってるなんて、メイソンってば面白すぎる!……なんて、他人事みたいに思わないとやってられない!

 メイソンに対する眼差しが、冷ややかな半眼になってしまった。

「ミラに対するピュアなあなたの気持ちは尊重したいけど、ものすごい誤解が山ほどあるみたい。でも、きっとあなたになにを言ったって通じないよね」

「おれをアホ扱いすんのか? まあいい。もうすぐ始業だ。あとでグラウンドに来い。おれが説教してやる」

 ミラがにやりとした。バカバカしいけど、そうするしかなさそうだ。うまくすればわかってもらえるかも? いや、どうだろ。なんだかもう、朝からぐったり。いますぐ家に帰りたい。

 呆れてうなだれ、ため息をつきそうになった矢先――。

「――こういうのはどうかな?」

 人だかりからジェイがあらわれて、わたしの横に立った。ミラが瞠目し、メイソンはけげんそうに顔をしかめる。っていうか、出てきちゃったらダメじゃない!

「は? なんだおまえ。こういうのって、なんだよ」

「きみとぼくが百メートルを走る。ぼくが勝ったら、きみはジーンに説教をせず、これからなにがあっても関わらない。それからきみは」

 ミラを一瞥する。

「制服を黙ってクリーニングに出すか、新しく買いなおす。それと、もう二度と嘘をつかない」

 ミラが目をむいた。すると、メイソンが問い返す。

「おれが勝ったらどうするんだ」

「ジーンに手を出さないと約束してくれるなら、きみの練習試合で演奏してもらえるよう、ぼくの養父に頼んで一流の吹奏楽団をおさえる」

「養父?」とメイソン。

「いろいろと顔の利く人だから、必ずおさえてくれるよ」

 デイビッドおじさんの名前を出したら目立つって、ジェイはとっさに判断したらしい。初日にしてはとっても賢いけど、三日もすればきっとバレる。

「本当か?」

 ジェイがうなずくと、メイソンは目を輝かせた。でも、ミラは納得していないらしい。

「たったそれだけ? そんなの甘いわよ」

「じゃあ、ついでにぼくを好きなだけ殴ってもいい。訴えたりしないから、試合にも出られるよ」

 メイソンがミラを見る。ミラは渋々うなずいた。

「よし、決まりだ」

 うそ、どうしよう。

「ジェ、ジェイ……?」

 っていうか、あなたいったいどうしたの。無謀すぎるってば!

 どちらかといえば細身のジェイと、アメフトで鍛えまくってオリンピック選手並みに早いメイソンのどっちが勝つかなんて、どんなおバカさんでもわかる。それはきっと、ジェイにだってわかっているはずなのに。

 ミラがメイソンの横に立った。

「……ジーンの味方をするなんて、頭にきたわ。やっつけちゃって、メイソン」

「ああ。まかせろ」

 ジェイがわたしを振り返る。すると、大丈夫とでも言うかのように小さく微笑んだ。

 え……えええ? この状況で笑えるとか、あなたどうかしてる!

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